親が亡くなったあと、
「遺言書を書いたと言っていた気がする」
「封筒に入った遺言書らしきものが見つかった」
「相続手続きが終わってから遺言書が出てきた」
といったことがあります。
一方で、
「遺言書を書いたという話は聞いたことがない」
「財産もそれほど多くなさそうなのに、法務局や公証役場まで調べる必要があるのだろうか」
と迷う人もいるでしょう。
遺言書について大切なのは、
すべての人が同じ範囲まで探すのではなく、遺言書がある可能性に応じて確認すること
です。
また、遺言書らしき文書が見つかっても、
自分たちで「有効」「無効」と決めて捨てない
ことも重要です。
この記事では、
- 遺言書が見つかった場合
- 書いたと言っていたのに見つからない場合
- 作成したかどうか全く分からない場合
- 相続手続き後に見つかった場合
- 遺言書らしき文書の形式が不完全に見える場合
を分けて、確認する順番を整理します。
- 最初に結論|まず「ある可能性」と「遺言書の種類」を確認する
- STEP1|まず家の中から遺言書の手がかりを探す
- STEP2|封印された遺言書は自分で開けない
- STEP3|「検認」が必要な遺言書か確認する
- STEP4|「遺言を書いたと言っていたのに見つからない」場合
- 法務局に自筆証書遺言が保管されていないか確認する
- 公正証書遺言がないか確認する
- STEP5|全員が法務局・公証役場まで検索する必要はある?
- STEP6|自筆証書遺言の形式を簡単に確認する
- STEP7|形式を満たしていないように見えても、家族だけで「無効」と決めない
- 法的な遺言として無効でも「意味がない」とは限らない
- STEP8|相続手続きが終わった後に遺言書が見つかったら?
- STEP9|遺言執行者が書かれていたら確認する
- 遺言書があっても、相続放棄の確認は別
- 今日やるなら、この7つ
- 遺言書確認チェックシート
- まとめ|「ない」と決める前に、可能性に応じて確認する
- 主な情報源・確認日
最初に結論|まず「ある可能性」と「遺言書の種類」を確認する
親が亡くなったら、最初から全員が法務局・公証役場まで調べなければならないわけではありません。
まず、
親が亡くなった
↓
遺言書について心当たりはある?
├─ 書いたと言っていた
│ → 自宅+法務局+公正証書を確認
│
├─ 遺言書らしき物が見つかった
│ → 種類・封印を確認
│
└─ 全く分からない
↓
まず自宅の重要書類を確認
↓
財産・家族関係などから
公的検索の必要性を判断
遺言書が見つかったら、次に、
| 考えられる種類 | 主な保管場所・確認先 | 検認 |
|---|---|---|
| 自宅等で保管された自筆証書遺言 | 自宅、貸金庫、専門家など | 原則必要 |
| 法務局保管の自筆証書遺言 | 法務局(遺言書保管所) | 不要 |
| 公正証書遺言 | 公証役場 | 不要 |
と進みます。
STEP1|まず家の中から遺言書の手がかりを探す
最初に確認するのは、
- 金庫
- 書類ケース
- 引き出し
- 仏壇まわり
- エンディングノート
- 通帳・保険関係書類と一緒に保管されたファイル
- 公証役場や法務局からの書類
- 弁護士・司法書士等の名刺や書類
などです。
親が、
「遺言は書いてある」
「公証役場へ行った」
「法務局に預けてある」
と話していなかったか、家族の記憶も確認します。
自筆のメモが出てきても、すぐ捨てない
例えば、
「家は長男へ」
「預金は兄弟で分けてほしい」
などと書かれた紙が出てくることがあります。
一見すると正式な遺言書ではなさそうでも、この段階で、
「これは無効だから捨てよう」
とは判断しません。
後で、
- 正式な遺言書なのか
- 本人の希望を書いたメモなのか
- エンディングノートなのか
を分けて考えます。
STEP2|封印された遺言書は自分で開けない
自宅などで封筒に入った遺言書を見つけた場合、封筒の状態を確認します。
裁判所は、封印のある遺言書については、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があると案内しています。
そのため、
封印のある遺言書は、自分で開けない
ことが基本です。
すでに開けてしまったら?
誤って開封してしまったからといって、
遺言書が自動的に無効になる
というわけではありません。
その場合でも、検認が必要な遺言書であれば家庭裁判所へ申し立てます。
開封してしまったことを隠したり、書き直したりせず、その状態のまま保管します。
STEP3|「検認」が必要な遺言書か確認する
自宅等で見つかった自筆証書遺言については、原則として家庭裁判所の検認を確認します。
検認とは、
遺言書の存在と内容を相続人へ知らせ、形状・日付・署名・訂正の状態などを確認して、後から偽造・変造されることを防ぐための手続き
です。
検認=「この遺言書は有効」という判定ではない
ここは重要です。
家庭裁判所で検認を受けても、
この遺言は法律上有効です
と認定されたわけではありません。
検認は、
- 日付
- 署名
- 形状
- 加除訂正
- 封筒の状態
などを確認・記録する手続きです。
遺言書の有効・無効について争いがある場合は、別の問題になります。
検認が不要な遺言書もある
主に、
- 公正証書遺言
- 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言
については検認不要です。
そのため、
遺言書がある
↓
必ず家庭裁判所
ではありません。
最初に種類を確認します。
STEP4|「遺言を書いたと言っていたのに見つからない」場合
親が生前、
「遺言書を書いてある」
「法務局に預けた」
「公証役場で作った」
と話していたのに、自宅から見つからないことがあります。
この場合は、自宅を探すだけで終わらず、
- 法務局保管の自筆証書遺言
- 公正証書遺言
を確認する価値があります。
法務局に自筆証書遺言が保管されていないか確認する
法務局には、本人が自筆証書遺言を預けておける自筆証書遺言書保管制度があります。
本人の死亡後、相続人等は、
遺言書保管事実証明書
を請求して、
法務局に遺言書が保管されているか
を確認できます。
保管されていることが分かった場合は、
遺言書情報証明書
を取得して、遺言書の内容を確認できます。
法務局で保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認は不要です。
公正証書遺言がないか確認する
公正証書遺言については、日本公証人連合会の検索システムがあります。
亡くなった人について、相続人等の利害関係人は、
公正証書遺言が作られているか
を全国の公証役場で確認できます。
平成元年以降に作成された公正証書遺言が検索対象となっており、遺言検索の申出自体は無料です。
遺言が存在する場合は、
- 作成した公証役場
- 作成年月日
などを確認し、必要な謄本等の取得へ進みます。
STEP5|全員が法務局・公証役場まで検索する必要はある?
法務局や公証役場での検索を、すべての人の必須初動とする必要はありません。
まず自宅の重要書類、エンディングノート、本人が生前に話していたことなどを確認し、遺言書がある可能性や、財産・家族関係の状況に応じて公的な検索まで広げます。
特に、本人が「遺言を書いた」「法務局へ預けた」「公証役場へ行った」と話していた場合などは、自宅で見つからなくても公的な確認を行う価値があります。
公的な検索まで行うことを強く勧めたいケース
例えば、
- 本人が「遺言を書いた」と話していた
- 「公証役場へ行った」「法務局へ預けた」と話していた
- エンディングノートに遺言書への記載がある
- 公証役場・法務局・専門家関係の書類が残っている
- 不動産・預金・有価証券等の財産が複数ある
- 家族関係が複雑
- 法定相続とは違う財産の渡し方を希望していた
- 相続人以外へ財産を渡したいと話していた
- 相続人間で争いになりそう
場合です。
このような場合は、
自宅で見つからなかったから遺言はない
と決めず、公的な検索まで行う価値があります。
検索を検討してよいケース
例えば、
- 遺言について本人から聞いたことはない
- ただし持ち家・金融資産などがある
- 財産を本人だけで管理しており、家族が全体を把握していない
場合です。
必要に応じて、公正証書遺言・法務局保管の有無を確認します。
まず自宅の確認でよいケース
例えば、
- 遺言書を書いたという話を全く聞いていない
- 家族関係が比較的単純
- 財産関係も複雑ではない
- 自宅の重要書類を一通り確認した
- 相続人間で特に争いがない
場合です。
このようなケースまで、
死亡したら全員が必ず法務局と公証役場を検索
とする必要はありません。
まず自宅・エンディングノート・家族の記憶から確認し、必要性に応じて公的な検索を追加します。
「財産が少ない=遺言書はない」とは限らない
ただし、財産額だけで遺言書の有無を判断することはできません。
例えば、
- 自宅だけ特定の人へ残したい
- 相続人ではない人へ財産を渡したい
- 特定の物を誰かへ残したい
など、財産額以外の理由で遺言書を作る場合もあります。
財産額は、
公的検索まで行う必要性を考える一つの材料
として扱います。
STEP6|自筆証書遺言の形式を簡単に確認する
自筆証書遺言には法律上の方式があります。
原則として、
- 本文
- 日付
- 氏名
を本人が自書し、押印します。
一方、財産目録についてはパソコン等で作成することもできますが、その場合は各ページに署名・押印が必要です。
日付が曖昧なものは注意
例えば、
「令和○年○月吉日」
のように、作成日を特定できない記載は問題になる場合があります。
また、
本文をパソコンで作成して署名だけ手書き
といったものも、自筆証書遺言として方式上問題になる可能性があります。
ここで挙げているのは、自筆証書遺言の主な方式です。
日付がない、押印がない、パソコンで作成されているなど、形式に問題があるように見えても、家族だけで「有効」「無効」を確定し、その文書を捨てないでください。
遺言書らしき文書はそのまま保管し、検認が必要か、有効性について専門的な判断が必要かを確認します。
STEP7|形式を満たしていないように見えても、家族だけで「無効」と決めない
例えば、
- 日付がない
- 押印がない
- パソコンで作られている
- 書き直した跡がある
- 本人の筆跡か分からない
など、遺言書として有効なのか疑問に感じる文書が出てくることがあります。
しかし、
要件を満たしていないように見える=捨ててよい
ではありません。
まずそのまま保管します。
検認が必要な文書なら、検認について確認します。
有効性について判断が必要なら、弁護士等へ相談します。
法的な遺言として無効でも「意味がない」とは限らない
例えば、
- エンディングノート
- 家族への手紙
- メモ
- パソコンで作った希望一覧
などは、正式な遺言として法的な効力を持たない場合があります。
しかし、
本人が何を望んでいたか
を家族が知る資料にはなります。
つまり、
法律上の遺言として有効?
↓
法律上の問題
本人の希望が分かる?
↓
家族で話し合う材料
と分けて考えます。
相続人等がその本人の希望を知った上で、
できる範囲で尊重しよう
と話し合うことは別の問題です。
STEP8|相続手続きが終わった後に遺言書が見つかったら?
これもあり得ます。
例えば、
遺産分割協議
↓
銀行口座の解約
↓
不動産登記
↓
数か月後
↓
実家の奥から遺言書を発見
というケースです。
この場合、
もう相続が終わったから関係ない
と無視しないでください。
後から遺言書が出たから、すべて自動的に無効になるとも限らない
まず、
- 遺言書として有効か
- 何について書かれているか
- 既に行った遺産分割と矛盾するか
- 誰に財産を渡す内容か
- 遺言執行者が指定されているか
- 不動産登記まで終わっているか
- 預金等をすでに分配したか
- 相続税申告をしたか
などを確認します。
そして、既に行った相続手続きへの影響について専門家へ相談します。
誰へ相談する?
内容によって、
遺言や遺産分割そのもの
→ 弁護士
不動産登記まで終わっている
→ 司法書士
相続税申告まで終わっている
→ 税理士
などが相談先になります。
複数の問題が重なる場合は、まず弁護士へ相談して整理する方法もあります。
STEP9|遺言執行者が書かれていたら確認する
遺言書に、
「遺言執行者として○○を指定する」
と書かれている場合があります。
遺言執行者
=遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。
例えば、
- 財産目録の作成
- 相続人への通知
- 不動産や預金等の手続き
などに関わる場合があります。
遺言執行者が指定されていたら、相続人だけで手続きを進める前に、その人へ連絡します。
指定された人が、
- 亡くなっている
- 辞退する
- 連絡が取れない
場合などは、家庭裁判所や専門家へ確認します。
遺言書があっても、相続放棄の確認は別
遺言書が見つかると、
この通りに財産を分ければよい
と思うかもしれません。
しかし、
- 借金があるか分からない
- 保証債務がある可能性がある
- 相続放棄を検討している
場合は別です。
遺言書が見つかったことと、すぐ相続財産を売却・処分してよいことは同じではありません。
借金・保証債務が不明な場合は、財産を動かす前に相続放棄の可能性も確認してください。
死亡後に必要な手続き全体の優先順位は、親が亡くなった後の手続きは何から始める?葬儀後に確認する順番でも整理しています。
今日やるなら、この7つ
自宅の重要書類を確認する
金庫、書類ケース、仏壇、エンディングノート等を確認します。
家族に「遺言を書いたと言っていなかったか」を聞く
自分だけが知らなかった可能性もあります。
遺言書らしき物が見つかったら、そのまま保管する
書き込み・破棄・訂正をしません。
封印されている場合は自分で開封しない
検認について確認します。
遺言の種類を確認する
- 自宅保管の自筆証書
- 法務局保管
- 公正証書
を分けます。
遺言の可能性が高いなら公的検索を検討する
法務局・公証役場を確認します。
借金が不明なら財産を動かす前に確認する
相続放棄の記事も確認します。
遺言書確認チェックシート
確認できた項目にチェックを入れられます。日付や保管場所などは、別のメモにも残してください。
まとめ|「ない」と決める前に、可能性に応じて確認する
親の遺言書について、
全員が必ず法務局と公証役場まで検索しなければならない
わけではありません。
まず、
本人が遺言について話していた?
↓
自宅に手がかりはある?
↓
財産・家族関係は複雑?
↓
必要性に応じて
法務局・公証役場も確認
という順番で構いません。
一方、
遺言書らしき物が見つかった
場合は、
自分で捨てない
↓
封印を確認
↓
種類を確認
↓
検認が必要?
↓
内容を確認
↓
遺言執行者・相続手続きへ
と進みます。
特に、
検認を受けた=有効な遺言と認定された
ではありません。
また、
相続手続き後に見つかった=もう無視してよい
でもありません。
遺言の有効性や既に終わった遺産分割への影響について判断が必要な場合は、専門家へ確認してください。
主な情報源・確認日
情報確認日:2026年9月8日。
遺言の有効性、遺産分割後に発見された遺言の扱い、既に行った登記・税務申告等への影響は個別事情によって異なります。判断が必要な場合は、弁護士・司法書士・税理士等へ確認してください。