親から相続した田んぼや畑を、これから貸したい・売りたいと思っても、「まず誰に聞けばよいのか」が分からないことがあります。近所の人が使っているようだが契約内容が見当たらない、「公社に貸している」と聞いたことはあるが詳しくは分からない、というケースもあるでしょう。
農地を貸したい・売りたいが相談先に迷う場合は、まず農地がある市町村の農業委員会へ相談します。 現在の利用状況や必要な手続きを確認し、必要に応じて農地バンクなど次の相談先につなげてもらう流れです。
※まだ農地の所在地・名義・利用者・区分が分からない場合は、先に親の田んぼ・畑を相続したら最初に確認することを確認してください。持つ・貸す・売るなど、どの選択肢を考えるか迷う場合は相続した農地をどうする?持つ・貸す・売る・転用・手放す選択肢へ進みます。
最初に結論|迷ったら農地がある市町村の農業委員会へ
農地は、一般の宅地や賃貸住宅と同じ感覚で、貸し借り・売買を決められるとは限りません。現在誰が使っているか、どのような契約があるか、地域で使いたい人がいるかによって、次に確認すべきことが変わります。
農地所在地の農業委員会
↓
現在の利用状況・必要な手続き・地域での利用可能性を確認
必要に応じて農地バンク
↓
貸したい人と使いたい農業者をつなぐ仕組みを確認
貸す・売るための具体的な手続き
| 相談先 | 簡単にいうと |
|---|---|
| 農業委員会 | 農地の手続きや地域での利用について、最初に相談しやすい市町村の行政窓口 |
| 農地バンク | 農地を貸したい人と、農地を使いたい農業者をつなぐ公的な仕組み |
| 市町村の農政担当 | 地域の農業や農地利用について相談できる場合がある窓口 |
農業委員会は「何を聞けばいいか分からない」ときの入口
農業委員会は、農地の届出・許可・利用について相談できる窓口です。専門用語を準備してからでないと相談できないわけではありません。たとえば、次のように伝えれば十分です。
親から農地を相続しましたが、自分は農業をしていません。
近所の方が使っているようですが、契約内容が分かりません。
この農地を貸すことはできますか。売却できる可能性も知りたいです。
農業委員会は、原則として農地がある市町村にあります。自分の居住地ではなく、田畑がある市町村が相談先です。「市町村名+農業委員会」で検索するか、市役所・町村役場の代表窓口に問い合わせます。
eMAFF農地ナビでは、地図上の農地情報から所管する農業委員会等を確認できる場合があります。ただし、表示情報だけで契約や売却の可否を決めるものではありません。分からない点は、表示された窓口に確認します。
相談前に用意すると話が早いこと
すべてそろっていなくても相談できます。分かる範囲で次の情報をメモにしておくと、最初の電話がしやすくなります。
| 確認したいこと | 分かる範囲で用意するもの |
|---|---|
| 土地 | 所在地、地番、面積、田・畑の別、登記上の名義 |
| 現在の利用 | 誰かが使っているか、賃料が入っているか、契約書・郵便物の有無 |
| これからの希望 | 貸したい、売りたい、まだ決めていない |
電話用メモ
親から相続した農地について相談したいです。
所在地:
地番:
面積:
現在の利用者:分かる / 分からない
契約書:ある / ない / 分からない
希望:貸したい / 売りたい / まだ決めていない
分からない項目は、分からないままで構いません。 何が不足しているかを知ることも、最初の相談の目的です。
誰かが使っている農地は、先に契約内容を確認する
親から「近所の人に使ってもらっている」と聞いていた場合は、新しい借り手を探す前に、今の関係を確認します。
- 正式な契約書があるか
- 無償か、有償か
- 契約期間はいつまでか
- 賃料はどこへ入っているか
- 草刈り、水管理、賦課金などを誰が負担しているか
農地の貸し借りは、一般の賃貸住宅と同じ感覚で自由に終了できるとは限りません。親が亡くなったからといって、現在使っている人へすぐ「返してください」と伝える前に、契約内容と必要な手続きを農業委員会へ確認します。
農地バンクとは|借り手を探すための公的な仕組み
農地バンクは、農地を貸したい人から農地を借り受け、地域で農地を使いたい農業者へ貸し付ける公的な仕組みです。正式名称は農地中間管理機構です。
現在は、農地バンクを利用して農地を貸したり売ったりする仕組みが中心になっています。ただし、農地バンクを使わず、農業委員会で必要な手続きをして当事者同士で貸し借りや売買を進める方法もあります。どちらが使いやすいかは、まず農業委員会へ相談すると分かりやすいでしょう。
ただし、農地バンクは不要な土地を必ず引き取る制度ではありません。場所、面積、周辺の農地とのつながり、農地の状態、地域で農地を使いたい人がいるかによって、借り手が見つからない場合もあります。
「公社に貸している」と聞いた場合
家族が「公社に貸している」と呼んでいても、現在の農地バンク、以前の制度の機関、別の団体など、実際の契約相手は名称だけでは分からないことがあります。
契約書、通帳の振込名義、郵便物を確認し、どの土地を誰とどのような契約で貸しているかを整理します。見つからなければ、そのまま農業委員会に相談します。
農地を売りたい場合も、まず農業委員会へ
農地も売れる場合はありますが、宅地のように誰にでも自由に売れる土地ではありません。買う側にも、農地を取得するための条件や手続きがあります。
売却を考える場合も、まず農地所在地の農業委員会に相談します。現在の利用者、地域の農業者、農地バンク、農地を扱う不動産事業者などが、次の候補になる場合があります。不動産会社だけを最初の相談先にするのではなく、農地としての手続きと利用可能性を先に確認します。
現在使っている近所の人から「買いたい」と言われた場合も、先に代金を受け取ったり、自己判断で名義変更を進めたりしません。「現在使っている方が購入を希望しています。何を確認すればよいですか」と農業委員会へ伝えます。
普通の不動産会社やJAへ相談してはいけない?
相談してはいけないわけではありません。ただし、農地には独自の手続きがあり、農地の取り扱い経験がない不動産会社もあります。まず農業委員会で制度上の条件を確認し、必要に応じて農地を扱う不動産事業者へ相談する順番が分かりやすいでしょう。
JAは、農業者支援、資材、金融、販売などを扱い、地域によっては農地に関する相談を受けていることもあります。ただし、農地の売買・貸借に関する行政上の手続きを進める窓口ではありません。まず農業委員会に確認し、必要に応じてJAへ相談します。
eMAFF農地ナビとオンライン申請は、遠方でも役立つ
eMAFF農地ナビでは、所在地・地番などから農地の情報を調べたり、所管農業委員会等を確認したりできる場合があります。所有者の意向として「貸したい」「売りたい」などの情報を掲載したい場合も、まず農地所在地の農業委員会へ申し出ます。
農地の売買・貸借などには、eMAFFによるオンライン申請に対応している手続きがあります。ただし、すべての手続きがオンラインで完結するとは限りません。提出先の農業委員会が対応しているか、遠方からどのように進められるかを先に確認します。
農業委員会へ聞く5つのこと
- 現在の貸し借りを確認したい
誰が使っているか、契約があるかを確認する方法。 - この農地を貸す方法には何があるか
農地バンクを使えるかを含め、地域で使いやすい方法。 - 地域で使いたい人がいるか
借り手を探す可能性や相談先。 - 売る場合に何が必要か
買い手がいる場合も含めて、先に確認する手続き。 - 遠方から手続きできるか
郵送・オンライン対応や、必要な訪問の有無。
親から農地を相続しました。自分は農業をしていません。現在は近所の方が使っている可能性がありますが、契約内容がよく分かりません。今後、貸すか売ることを考えています。まず何を確認すればよいでしょうか。
この程度の説明で十分です。相談を通じて、次に集める書類や連絡先を確認します。
相談先まとめ
| 困っていること | 最初に相談しやすいところ |
|---|---|
| 現在の利用関係を確認したい | 農業委員会 |
| 農地を貸したい | 農業委員会・農地バンク |
| 農地を売りたい | 農業委員会、必要に応じて農地バンク |
| 農地バンクを使いたい | 農地バンク・農業委員会・市町村 |
| 農地転用を考えたい | 農業委員会 |
| 賦課金について知りたい | 土地改良区 |
| 国庫帰属を検討したい | 法務局・地方法務局の本局 |
今日やるなら、この3つ
- 農地がある市町村の農業委員会の連絡先を調べる
- 固定資産税の通知書、登記情報、契約書などから地番を確認する
- 「今誰が使っているか」「貸したい・売りたい・まだ決めていない」のどれかを一言で説明できるようにする
まとめ|制度名より、最初の相談先を決める
農地を貸す・売るときに、最初から制度を理解する必要はありません。農業委員会は、農地の手続きや利用について最初に相談する行政窓口、農地バンクは、農地を使う人につなげる公的な仕組みと考えると分かりやすくなります。
農地所在地の農業委員会へ、分かる範囲の地番と今の利用状況を伝え、貸す・売る希望を相談します。そのうえで必要に応じて農地バンクや別の相談先につなげてもらい、具体的な手続きを確認します。
借り手・買い手が見つからず、地域での利用可能性も低い場合は、貸せない・売れない農地をどうするかで、持ち続ける負担と手放す方法を整理します。
農地として貸す・売る以外に、駐車場や宅地など別用途も検討したい場合は、相続した畑を転用する前に確認することで、農地側・都市計画側の確認順を整理します。
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情報源・確認日
- 農林水産省:農地バンクに関するよくあるご質問
- 農林水産省:農地の貸し借り・売買に関する案内
- eMAFF農地ナビ:お問い合わせ
- eMAFF農地ナビ:農業を始めるには~手続き等について~
- 農林水産省:農地をめぐる事情について
情報確認日:2026年9月3日。農地の貸借・売買の可否や手続き、農地バンクの利用、オンライン申請の対応状況は、土地の所在地・利用状況・地域の制度等によって異なります。契約や手続きの前に、農地所在地の農業委員会、農地バンク、市町村等の最新案内を確認してください。